2013年5月7日火曜日

日焼け止め


日中の日差しが強くて日焼け止めが欠かせなくなってきています。

そんな今日は「日焼け止めのHow!」


【まとめ】

日焼け止めの成分はベンゼン環を持ち、紫外線を吸収するはたらきをしている。

日焼け止めはそれぞれUVB防止効果・UVA防止効果を示しているSPF・PAを参考に選び、使い分けると良い。


【はじめに】

≪ストーリー≫

日本だと毎日使う日焼け止めはSPF15や30、スポーツや海など日差しの強い場合にはSPF 50を使うのがふつう。
しかしアメリカでSPF 110の日焼け止めを発見!
勝手に100が上限だと思っていたけれど、そうではなかったんだ・・・。

そういえばそもそもSPFってなんだっけ?
日焼け止めはどうやって日焼けを防いでいるのだろう?


SPF100やSPF110など普通に見かけます。


≪まずSPFの定義を確認≫

SPFとはSun Protection Factorの略。
紫外線の中でも日焼けの原因になるUltraviolet B (UVB) raysをどれだけ防ぐ効果があるかを示した値です。

UVBはsunburn(赤い日焼け:紅斑、日にあたってすぐできる)の原因となります。


日本においてSPFは「日本化粧品工業連合会SPF測定法基準」に従って、以下のように求められます。


1.国際標準化機構(ISO)の「ISO24444」(※)に従い測定。

※詳しいSPFの計算方法

ISOの基準書は購入しないと読むことが出来ず、著作権の問題もあるためここにはそのまま掲載できませんが、関連する論文を元に測定方法を解説します。

SPF = (日焼け止めを塗った肌のMED)/(日焼け止めを塗っていない肌のMED)

MED(Minimal Erythema Dose)は「日焼け止めを塗っていない肌に、確認できる最小の紅斑(赤い日焼け)が出来るのに必要な紫外線量」のことで、定められたテスト(2mgの日焼け止めを肌1平方センチメートルに塗る)で測定されます。

http://www.scielo.br/pdf/rbcf/v40n3/14.pdf (英語)
http://www.safersunscreens.com/truthaboutspf.html (英語)



2.1.の測定によって得られたSPFiを平均し求まったSPFの小数点以下を切り捨てて表す。

SPFは高いほど日焼けを防止する効果が高いということになります。

日本で販売されている日焼け止めのSPFの上限値は50に設定されており、計算で求まったSPFが51以上の時、その95%信頼区間(※)の下限値も51以上の時はSPF 50+と表します。

※95%信頼区間:「本当のSPFがA~Bの範囲の数値に収まる」というと100回に95回は当たっているという範囲のこと。

アメリカでも2011年にSPFの表示の上限は50とするという提言がありましたが(それ以上の数値の日焼け止めの効果に差がある証拠がないとして)、それ以上のSPF表記の日焼け止めがまだ沢山あります。なぜだろう?と思い調べると、SPFのラベルの表示の変更についてはまだ義務化がされていませんでした。しかし、年々減っているような?気がします。

http://www.jcia.org/n/biz/gl/02-2/(日本語、SPF測定法基準)
http://www.iso.org/iso/catalogue_detail.htm?csnumber=46523(英語、ISO 24444)
http://www.fda.gov/forconsumers/consumerupdates/ucm258416.htm(英語、FDA)

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ふう。定義の確認は疲れますね。(私だけ?(笑))

ちょっと休憩で、ビーチの写真です。
私の住む場所から車で1時間半の場所で、四輪駆動車であればビーチをドライブすることも出来ます。



ビーチは日差しが強いので、SPFの高い日焼け止めを選ぶ必要がありますね。

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気を取り直して、次はPAの定義です。

≪PAの定義≫

日焼け止めにはSPFの他にPA(+, ++, +++, ++++)という記号も載っています。
これは何を示しているのでしょうか?

PAはProtection Grade of UVA(UVA防御指数)で、Ultraviolet A (UVA)の防止効果を表す指標です。


紫外線には異なる波長の3種類があり、UVBを防止する(SPFではこの防止の程度がわかる)だけでは足りないようです。

他の2種類はUVAとUltraviolet C (UVC)で、A, B, Cの順に波長が短くなります。UVCはそのほとんどがオゾン層で吸収されてしまいますが、UVAはオゾン層に吸収されず、suntan(色素沈着による黒い日焼け、日にあたってしばらくしてからできる)の原因になります。(UVBはsunburnの原因でしたね。)

そのためSPFだけでなく、PAをチェックする必要があるのです。


日本においてSPFは「日本化粧品工業連合会UVA防止効果測定法基準」に従って、以下のように求められます。

1.ISO24442に従い測定。

現在使われていると思われる測定方法についての論文は見つかりませんでした。


2.ISO24442 に基づき測定し得られたUVAPFi を平均し求められたUVAPF の小数点以下を
切り捨てた値をつかってPAを分類・表示。

PAには次の4段階があります。
   PA+ :PFA2以上4未満
   PA++ :PFA4以上8未満
   PA+++:PFA8以上16未満
   PA++++:16以上

PAの+の数が多いほど、UVAを防ぐ効果が高くなります。
PA++++を含む上の基準は日本で2013年1月1日に新たに発効されたもので、それより前はPA+++が一番大きな値でした。


アメリカではこのように細かいPA表示は行われていません。そのかわりに「Broad protection」(UVB以外にUVAからも防げる)と書いてあり、どれくらい効果があるのか製品どうしの比較がしにくいです。
PA表示に関する論文が少なく、測定方法について詳しくわかなかったのは、アメリカでSPFほど認知されていないからかもしれません。

http://www.env.go.jp/chemi/uv/uv_pdf/01.pdf (日本語)
http://www.jcia.org/n/all_pdf/topinfo/JCIA_release20121114-UV-PF.pdf(日本語)
http://www.iso.org/iso/catalogue_detail.htm?csnumber=46521(英語、ISO24442)


≪SPFやPAを元に、どう日焼け止めを選べばいいの?≫

1.時間と場所を考慮する

紫外線量は紫外線にあたっている時間と紫外線の強さを掛け算して求めることが出来ます。

外に出ている時間が長いほど紫外線に長くあたることになります。
また、日差しは10時から14時頃が最も強く、高度の高い場所ほど紫外線の強さはさらに強くなります。

このあとに出てきますが、SPFが高いほど肌への負担が大きいようなので、時間と場所を考えて適切なSPFの日焼け止めを使うと良いと思います。


2.カバーする紫外線の範囲を考慮する

UVAとUVB両方を防ぐ日焼け止めが良いでしょう。

http://www.scielo.br/pdf/rbcf/v40n3/14.pdf (英語)
http://www.epa.gov/sunwise/doc/sunscreen.pdf (英語)

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休憩第二弾!

私の住む地域にはspring(水源地)が多く、暖かくなるとその水源地から浮き輪を使って川下りができます。水源地は本当にきれいで写真のようにエメラルドグリーンです。そこで泳げてしまうのだから驚きです。



浮き輪で1時間くらいぷかぷかのんびりと川を下っていきます。

こういう場所に行くときも日焼け止めは欠かせませんね。
SPFとPAをチェックして、適切なものを塗りましょう。

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【日焼け止めのHow】

日焼け止めの表示が理解できたところで、では、日焼け止めはどうやって皮膚を紫外線から守っているのでしょうか?
調べ、考えてみました。


≪日焼け止めの成分≫

家にある異なる3つの日焼け止めの成分を比較してみました。
(どれもSPF 50以上ですね・・・)

成分はactive ingredients(日焼け防止に関わる成分)とinactive ingredients(日焼け防止には直接関係のない成分)に分かれています。

今回はactive ingredientsのみ比較します。


- Ultra Sheer SPF 55 (Neutrogena)

Neutrogenaはスキン/ボディケア商品などで有名なブランドです。

avobenzone 3.0 %, homosalate 10.0 %, octisalate 5.0 %, octocrylene 2.8 %, oxybenzone 6.0 %



- Ultra Sheer SPF 70 (Neutrogena)

avobenzone 3 %, homosalate 15 %, octisalate 5.0 %, octocrylene 2.8 %, oxybenzone 6 %



- ultra GUARD SPF 90+ (Coppertone)

Coppertoneは日焼け関連の商品を多く出している企業です。

avobenzone 3 %, homosalate 15 %, octisalate 5.0 %, octocrylene 10 %, oxybenzone 6 %



SPFが異なることで割合の変化している成分はhomosalateとoctocryleneでした。

avobenzoneはUVAを、homosalate, octisalate, octocryleneはUVBを、oxybenzoneはUVBとわずかにUVAを吸収することがわかっています。

そのためSPFの変化と共にUVBを吸収する成分がふえているのは納得ですね。

http://www.epa.gov/sunwise/doc/sunscreen.pdf(英語)



≪それぞれの成分はどのようにして紫外線の吸収に貢献しているの?≫

それぞれの化学構造式を書いてみましょう。


avobenzone


homosalate


octisalate



octocrylene


oxybenzone

上記の分子に見られる特徴・官能基(※)を挙げてみます。

※複数の原子の集まり

・ベンゼン環(二重結合のある六角形のもの)
・ケトン(R - (C=O) - R)
・エーテル結合(‐O-)
・エステル結合(- O- C=O-)
・ヒドロキシル基(- OH)
・アルキル基(‐ CnH2n+1)
・アジ基(≡N)

具体的には矢印の部分などが上に挙げた特徴・官能基にあたります。




挙げた特徴の中で紫外線の吸収に貢献しているのは「ベンゼン環」でしょう。
ベンゼン環のような共役二重結合(二重結合が一つおきに連なったもの)は光を吸収する性質を持っています。
これはベンゼン環中の電子の状態(二重結合に関わるπ(パイ)電子と呼ばれるもの)が光のエネルギーを吸収して状態が変化するためです。


では、その他の特徴・官能基の役割は何なのでしょう?

私の予想では、ヒドロキシル基・アルキル基は肌への吸着を促す役割をしていると思います。
ヒドロキシル基は過去の記事『コーンフレークとマシュマロのお菓子』(http://howroom.blogspot.com/2013/04/blog-post.html)で出てきたように、水素結合をつくるので、親水性があります。一方アルキル基は疎水性のため皮脂などの油分と吸着しやすいと思います。

ベンゼン環・ヒドロキシル基・アルキル基以外の特徴・官能基は、ベンゼン環の電子の状態の違いに関わっていると思います。
例えばUVAを吸収するavobenzoneとUVBを吸収するhomosalateではベンゼン環の近くにある官能基が異なります。avobenzoneはケトンとエーテル結合、メチル基などですが、homosalateはエステル結合やヒドロキシル基ですね。
違う原子どうしの組み合わせは異なる電子の状態をしており、原子どうしの結合の強さ等が変わります。
上に挙げた隣接する異なる官能基等はベンゼン環の電子の状態/原子の結合状態に影響を与え、その結果、吸収する光のエネルギー(波長)の違い(UVAを吸収するかUVBを吸収するか)があらわれているのではないでしょうか。


これらの性質によりUVA, UVBを吸収すること、さらに肌に塗っても安全であるということを満たした化学物質が日焼け止めの成分に選ばれたのだろうと思います。

http://www.epa.gov/sunwise/doc/sunscreen.pdf(英語)
http://www.skinacea.com/sunscreen/uv-filters-chart.html#.UX6Z-LV1F8F(英語)
http://www.shimadzu.com/an/uv/support/fundamentals/apl.html(英語)
http://www.an.shimadzu.co.jp/uv/support/lib/uvtalk/uvtalk2/apl.htm(日本語)


≪SPFが高いほど肌への負担が大きい?≫

上で見たようにSPFが高いほど、含まれる日焼け防止に関わる成分が多くなります。
これらの成分は紫外線を吸収して電子の状態が変わった後、熱を放出します。

これら成分が直接肌に触れることやその発する熱が肌を痛めると言われているため、常に高いSPFの日焼け止めを塗っていればよいというわけではないようです。

化学物質の肌への影響はいつか詳しく調べて考えたいですね。


【おわりに】

改めて日焼け止めの事を調べ考えて、今まで適当に日焼け止めを選んでいたなと反省しました。(SPFが50より大きい値のものを買っていたり・・・)

今日からは表示や成分をチェックして、TPOにあわせて日焼け止めを塗ります。
目にはぬれないので、サングラスを着用します!(忘れがちですが、これも重要だと思います)

みなさまも良い夏を迎えてください!



【参考】

http://www.env.go.jp/chemi/uv/uv_pdf/01.pdf(日本語、環境省)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18410801(英語)
http://asp.eurasipjournals.com/content/2010/1/483562(英語)
http://pharmaxchange.info/press/2011/03/the-ageing-skin-part-4a-sunscreens/(英語)
http://tinyurl.com/ct2nezd(英語)
http://tinyurl.com/chevgt8(英語)
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0190962289700840(英語)


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